花生捲冰淇淋(フアシェンジュエン・ビンチーリン)再現への道のり5〜やっとたどり着いた編〜

▶逆上がりできた!のあとから、技術を磨く(=皮の焼き方)段階に入り、

そこからがなかなか前に進まなくて大変でした。

毎日毎日皮を作り、焼いて練習するのですがなかなか納得の行くものにたどり着きませんでした。そもそものレシピに問題があるのか?気温が変わったからなのか?それとも、焼き方の技術の問題?毎日頭をひねりながらぐるぐるぐるぐる思考は巡っていました。皮のレシピはこれだ!というものができたものの、まだまだ出来上がりにムラがあり、まぐれで焼けた!ということも多くて、それじゃだめだと思いながら改良を重ねました。

「もちもちさせる生地」については納得のいくレシピを作り出すことができました。

はじめの頃の生地はもちっと感もよく焼きもうまくいっていたのですが、まだまだ分厚かった。
初期は粘りも強くだまも目立つ硬めの生地

でも、もっと薄くするためには生地自体にとろみを出して水分量を多く、でもグルテン(もちっと感)をだすようなものがいい、そうなるとたどり着いたのはこの粘り

たどり着いた生地、本場台湾のレシピとは少し違います。日本の中力粉でつくるためには強力粉を少しミックスするし、グルテンを出す為のこね方も、ただ水を入れるんじゃなくて少し温めて、など。何度も生地を作る中で

「なんか違う」「もっとこうしたい」「失敗している原因はこれかな?」

失敗は成功の母だと信じて、試行錯誤を繰り返し、自分で仮説を立てて

逐一パティシエの方に相談→すぐ実践

を繰り返してレシピにはたどり着くことができました。

自分が考えすぎていること、もっと考えたほうがいいことの両方を教えていただくことができました。相談していなければ余計なことに囚われて無駄な時間を使ってしまっていただろうし、本当に考えるべきポイントが自分だけでは全く分かっていなかったと思います。そこを助けていただき、励ましていただき、自信をいただきながらたどり着くことができました。

一番難しかったのはその生地を薄く焼き上げること

台湾人が生地を手のひらの上で回しながら伸ばす独特の技術を再現することも妥協して、ヘラで流したりもっと確実にうまくいく方法はないかを考えました。

しかし、あるべき生地の形を考えているうちに、妥協するポイントではなく、この作り方をできるようにならないと、私がもっともこだわりたかった

「もちもちしているのにとても薄い皮」

くるんで食べたときに生地を重たく感じない、もちもちとしたとても薄い生地が重なることで、今まで食べたことがないような新しい食感が生まれる皮。

鉄板に打ち付けた生地を引っ張り上げて回収して焼く、この台湾ならではのやり方だからこそ、ものすごく薄い皮が焼けるのです。この手法は妥協してはいけない。何度も練習しました。

この生地を焼くポイントは「低温で瞬時に焼く」こと。

この温度が少しでもずれると生地はひっついてとれないし、焼きすぎるともちもちがなくなってしまうし…どうも安定しなくて、練習あるのみ!と思いながら毎日練習していたのですが、納得のいくコツがなかなかつかめず、ただ、あがいてました。

そんなとき閉店後、生地を練習しているとご近所でいつもとてもお世話になっているウィーンレストランのシェフと奥さまがいらっしゃりました。

「低温」っていうのが違うんじゃないの?

という今までと真逆の発想をいただき、たしかに、なんで低温って思ってたんだろうと頭を打たれた気分でした。この生地はすぐに固まるから弱火じゃないとすぐに焼き上がってしまうと思い込んでいましたが、水分量を増やして伸びやすい生地にすれば、高温でも瞬時にきれいに焼ける可能性があるという考えに行き着きました。

色んな温度で焼いてみよう!一緒になってご夫婦と試行錯誤すると信じられないことが起こりました。高温なのに、ある程度冷ますとたまにめっちゃうまく焼ける瞬間があるんです。

この「たまにうまく焼ける」温度を一定にするにはどうしたら良いのか。

そのときにアドバイス頂いたのは「フライパンを耳の近くに近づけて温度を感じる」ことでした。たしかに耳の近くでは温度をめっちゃ感じる!でも私にはどのくらいが適温なのかを見極めるのがすごく難しかった。

そんなとき、シェフの奥さんの「ホットケーキのやり方!」

という言葉で、一気に道が開きました!

高温のフライパンを濡れタオルの上に置いたときの「音」で、うまく焼ける温度を覚えること。

音で覚えることができるので、まぐれじゃなくて、生地を安定した薄さを保った状態で焼けることができたんです。

いままで自分が一番難しかったこと、まぐれじゃなくて、なにか目安になるものがほしい。それが「音」だったんです。

「薄くてもちもちしていて大きく焼いても破れない」

自分が思い描いていた生地ができるようになりました。

その後も練習する中で、ちょっとしたコツがいっぱい出てきました。それは自分で見つけるものもあったし、隣で仕込みをしていたタイ人のシェフが見つけてくれることもありました。

最終的には透けて見えるくらいに薄くて、でも破れずにもちっとした食感のある生地が完成しました。

いっぱい失敗した!でもそれがすべての材料になりました。不器用だからいつも失敗を繰り返してしまう私ですが、だからこそ仮説だてて相談することができたし、何よりも協力してくださる様々な方の力が結集して、このお菓子を再現できました。

なんでも自分ひとりで成せることはない

SALA自体もそうですが、なにか夢を持って実現に向かうときに誰かの力なしでは成し遂げることはできません。それは甘えて人に依存するわけではなく、

まずは声を上げる自分自身が誰よりも「知恵」を絞ります。

実現するためにはどうしたらいいのか?人にはそれぞれの知恵の絞り方があるのだと思います。私の場合はそのやり方が全然スマートじゃないんです…不器用だからこそ、まずやりまくって失敗しまくって、それを材料にして仮説だてて相談をしてアドバイスを受け、助けてもらうこと。相談をさせていただける方々は日々の中でびっくりするほどの縁がつながっています。

そうやって色んな方の協力でできたこのお菓子。

一番難しい皮は完成されたのであとは削る「ピーナッツの粗さ」とアイスとパクチーの配分。これは試食していただきながら探っていくことだと思っています。

ちょうど皮が完成した次の日、

▶台湾でめっちゃお世話になったJessicaが先日日本に来てくれました!

サプライズで会いに来てくれて、嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。もちろん、完成したお菓子も食べてもらいました。だけどやっぱりピーナッツの粗さが気になるということを相談すると、カンナの調整や粗くなるためのヒントを残していってくれました。

先月台湾へいったときに残していった私の荷物、お土産、一番ほしかったものをたくさん持ってきてくれました。

Jessicaにとって初めて出会ったときの私は何物でもない。急に日本からきたアジア料理屋を営んでいる人。でも縁を頂いて、出会って、仲間になって、信じられないほどの「力」をくれました。それは本当に純粋な「力になりたい」という思いからくる、なんの利害関係もない潔いほどのやさしさでした。こんなに優しくって強くって尊敬できる人たちに出会えたことも私の大きな力です。わたしも早く力をつけてJessicaたちのように誰かの「力」になりたいし、Jessicaたちの力にもなれるように日々努力するのみです。

長くなりましたが、今回台湾のデザート

「花生捲冰淇淋(フアシェンジュエン・ビンチーリン)」

を再現する中でたくさんの学びと力を得ることができました。

この力は今後にも必ず活かさせていただきます!

早くみなさんに食べていただけるように。あともう一歩、がんばります!

そして絶対、もう一回早いうちに台湾へいく!花生捲冰淇淋(フアシェンジュエン・ビンチーリン)発祥の地、宣蘭へ!

はじめは全然ままなりませんでしたが少しずつ、なめらかに、薄くなっていきました
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黒田尚子

黒田尚子

神戸アジアン食堂バルSALA店長。