最近、ニッチェル(ネパール人スタッフ)を見かけないぞ!という方も多いかと思います。ニッチェルは、現在大学入試に向け大切な時期に入ってきています。SALAのシフトを数ヶ月間減らし、猛勉強中です。
そんなニッチェルが、昨日と今日久しぶりにSALAで働いてくれました。悩みもいっぱいあるとのことで、営業後にSALAのPAPAが彼の今後のついて相談に乗る時間を作りました。「大学にいきたい」「日本で就職したい」そのためにニッチェルが考えていることはとても複雑で、一筋縄にはいきません。

思い返せば、SALAがOPENしてすぐ、NPO法人まんまるあかしさんからの紹介でニッチェルはSALAへと面接に来てくれました。当時日本に来たばかりのニッチェル(16歳?)は、日本語が全く喋れず、英語(もちろん店長の私ではなくフィリピン人のスタッフが通訳してくれました)で面接をしました。
OPENして間もなかったので、どうしたものか正直困りましたが、日本に来たばかりの彼が、日本語もしゃべれないのにたった一人で電車に乗って、SALAの門を叩き、働こうとしたその勇気に心を打たれました。
今でもはっきり覚えているのは、30分以上も前からSALAの近くの電信柱の影で、約束の時間になるまで緊張した面持ちで隠れて立っていたニッチェルの姿。
ニッチェルのその勇気だけで一緒に働きたい、私はそう思いました。

そんなニッチェルですが、そこからの彼の努力は凄まじいものがありました。
NPO法人まんまるあかしさんでの日本語教室などの座学はもちろん、SALAでも果敢に日本語をお客さんと話す努力をしましたし、SALAの先輩スタッフからも積極的に仕事のことや日本語を教えてもらっていました。
私も仕事のことで高いレベルを求めすぎて、かなりきついことを言ったこともありました。それでも、ニッチェルは明るく笑顔でついてきてくれたんです。

働き始めて1年半。気がつけばニッチェルは、関西弁を早口で操る青年になっていました。今では、彼がホールスタッフでいてくれると、安心して任せられます。
現在は日本の高校生に混じって県立高校に通っています。寒い日も暑い日も、勉強時間を確保するためにほぼ始発の時間に電車に乗って通学しています。SALAで働く日の休憩時間も、常に勉強をしています。

高校へ通うようになってからはテスト、成績の話もよくするようになりました。これはニッチェルの入学してから今までのテストの成績表です。総合順位を見ていただくと、


目に見えて分かるほどの努力が成績にあらわれています。
いくら英語ができても、日本の高校のテストは日本語で作られています。英語を日本語に訳すという問題もありますし、科学、物理、数学だって問題は全部日本語で書いてることを考えれば、その難しさはとてつもないものだと思います。それでもニッチェルは努力を続け、ここまで来ることができました。
そして彼は今、大学へ進学し、日本の企業に就職したいという夢があります。
自分の思いを正確に日本語で伝えられるようになった頃から、ニッチェルはとても明るくなり、冗談を言うようにもなったし、家族の話や悩みごともたくさん話してくれるようになりました。よく、仕事が終わったあと、まかないを食べながら二人で色んなことを語り合いました。そうして話を聞いていると、ニッチェルの夢が時間とともに現実味を増し、具体的になってきていると感じました。

ニッチェルは「努力の天才」です。
彼が壁にぶつかって悩んでる姿、それをなんとか乗り越える姿、悔しい思いをしている姿…たくさん見てきました。
そして今、ニッチェルは一番大きな壁にぶつかっていると感じています。
1年後に彼のご両親が祖国のネパールに帰ることになり、自分の力だけで大学へ行かなくてはいけない状況になったのです。もちろん、大学の授業料、生活費、全て自分で賄わなければなりません。受験も間際になって発覚したこの大きな問題。心が折れそうになることですが目をそむけることができない現実です。
この問題に直面し、まずは頭の中を整理して、なんとか夢を諦めないために人生設計をすることが早急に必要になりました。
それを一緒に考える時間が今日でした。私だけでは頼りないので人生経験豊富なSALAのPAPAが出動です。

今までポジティブだったニッチェルも、今日は不安な胸の内をSALAのPAPAに真剣に話していました。その話を聞いて、「自分のできないこと」を素直に認められる彼に、新しい成長を感じました。
夢を見ることは、素晴らしく、そしてかけがえのないことです。

私たち(SALA)の描く社会もそうですが、夢を追うとき、一人ではできないことが山程あります。でも、思いを伝え続けたり、行動し続けると必ず誰かがそれを見てくれていて、共感してくれて一緒に叶えるための方法を考えてくれます。

社会はたくさんの人々のやさしさで溢れていて、そのやさしさに支えられながら思いを形にすることができるんだということを、SALAを応援してくださる多くの方々を通して日々実感しています。
だからニッチェルにも、大きな壁にうなだれることなく、前を向いて強い覚悟を持って。夢を諦めずに、叶えるための方法をたくさんの方々と一緒に考えてもらいたいんです。
私も全力でニッチェルを応援しますし、一緒に頑張ろうと思います。
ニッチェルは、国籍や年齢を超えて、いつでもどんな人とも、同じ目線で接することができる、本当に素直で純粋な青年です。

そんな彼が夢を叶えるために、私ができることは何かを考えています。皆さんにお願いしたいことも今後出てくるかもしれません。その時は、ぜひ、彼の夢への道を照らす光になっていただければ幸いです。
きっと光はある、ニッチェル頑張れ!

黒田尚子

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